本将棋と56将棋のルール
はじめに
以下の説明では、特に断りがなければ本将棋(一般的な将棋)と56将棋で共通のルールについて述べます。 「将棋」と書いてあるときには、本将棋と56将棋の両方を指します。 大部分のルールは同じですが、異なる点があるときにはそのたびに説明していきます。
将棋は二人で行うゲームで、交互に駒を動かすことで進行していきます。 将棋を行うことを「将棋を指す」、あるいは「将棋の対局をする」などといいます。 駒を動かす順番のことを「手番」といいます。対局者のうち「手番」のほうが駒を動かします。 駒を動かすと相手に「手番」が渡ります。 先に駒を動かす対局者を「先手」、後に動かす方を「後手」といいます。 「手番」ではないのに駒を動かしてしまうと反則になります。 連続で二回駒を動かしてしまうと、「二手指し」の反則になります。 ある場所からある場所への駒の移動を、「手」あるいは「指し手」といいます。
・将棋の駒
将棋の駒は、玉将(玉)及び王将(王)、飛車(飛)、角行(角)、金将(金)、銀将(銀)、桂馬(桂)、香車(香)、歩兵(歩)の8種類です。 (56将棋では桂馬と香車は使用しません)
対局者は二人とも同じ駒を使用しますが、その向きによってどちらの駒であるか示します。
駒の種類によって、それぞれ動かすことのできる範囲(駒の動き方)が決まっています。 その範囲以外に駒を動かしてしまうと反則になります。 他にもいくつかの反則がありますが、詳しくは後で説明します。
・将棋盤と駒台
56将棋では、5×6マスに区切られた将棋盤を使用して対局します。 (本将棋では9×9マスの将棋盤を使用します。) 将棋の駒は、対局中、1.将棋盤か、2.駒台のどちらかに存在することになります。 (対局開始から終了まで、駒の数は変わることはありません。) ハンデをつけるなどのために使用しない駒がある場合は、駒箱などの別の場所にしまっておきます。 将棋盤上の一つのマスに二つ以上の駒が存在することはできません。 また、一つの駒が複数のマスにまたがって存在することもできません。 将棋では、相手の駒を取ることができ、その駒を自分の持ち駒として使用することができます。 (後で詳しく説明します。) 二つの駒台には、先手と後手それぞれの持ち駒が置かれます。 持ち駒の数に制限はありません。 盤上のすべてのマスの状態と駒台の状態をあわせて「局面」といいます。
・駒の動かし方
駒の動かし方には、 1.盤上のマスにある駒を、別のマスに動かす(指す) 2.駒台の駒を使用して、盤上のマスに置く(打つ) の二つがあります。 自分の手番では、必ず指すか打つかしなければなりません。(パスは不可。) 8種類の駒それぞれの動きについては、後で説明します。
・勝敗の付き方
自分の玉以外の駒で相手の玉を取れる状態にする手を「王手」といいます。 王手がかかっている局面では、王手を解除する指し手以外は反則になります。 王手がかかっていて、どうやっても次に自分の玉を取られてしまう状態になると負けになります。 (つまり、王手を解除できるルールに則った指し手がない状態です。) この状態を「詰み」といいます。 また、対局の途中でも、負けを認めて降参することができます。 これを「投了」といいます。 「投了」した時点で、その対局者の負けが決まります。 引き分けになるケースとして「千日手」があります。 同一局面が4回現れた時点で「千日手」で引き分けになります。 お互いの玉が敵陣に入り込むと、詰ますのが難しく決着がつかなくなってしまいます。 本将棋では「持将棋」あるいは「入玉宣言法」というルールで勝敗(または引き分け)を決めます。 56将棋では「持将棋」ではなく「トライルール」を採用しています。 敵陣の特定のマスに自分の玉をトライしたほうが勝ちになります。
将棋盤の縦の列を筋、横の列を段といいます。 筋は算用数字(1,2、3‥)、段は漢数字(一、二、三‥)を使って一つのマスを表します。 たとえば、下図の盤面にある駒を表すと、先手は3六の玉、後手は3一の玉という風になります。 指し手は、先後の記号、移動後の駒の位置、駒の種類という順番で表します。 先後の記号ですが、▲は先手を表し、△は後手を表します。 駒の形の記号(☗、☖)もありますが、環境によって表示されない場合があるので、 以下では三角形の方を使用します。 たとえば、先手の3六の玉が3五に動いたとすると、▲3五玉という表記になります。
本将棋では、自分の側から三段目までを自陣、相手の側から三段目までを敵陣といいます。 56将棋では、二段目までを自陣と敵陣としています。
対局は基本的に以下の初期配置で始まります。 上図が56将棋の初期配置、下図が本将棋の初期配置です。
ハンデをつけるため、上級者が自分の駒をいくつか使用しない「駒落ち」というものもあります。
・将棋の駒
将棋の駒は、「玉将(玉)」及び「王将(王)」、「飛車(飛)」、「角行(角)」、「金将(金)」、「銀将(銀)」、「桂馬(桂)」、「香車(香)」、「歩兵(歩)」の8種類です。 (56将棋では桂馬と香車は使用しません。) また、「成る」ことで動きが変わる駒もあります。 「成る」ことによって、飛は「竜王(竜)」、角は「竜馬(馬)」、銀は「成銀(全)」、桂は「成桂(圭)」、香は「成香(杏)」、歩は「と金(と)」になります。 玉と金は成ることはできません。 成銀、成桂、成香の略称(全、圭、杏)ですが、この表記はインターネットや書籍上で一般的に用いられています。 木製の将棋駒には、金の字をくずし方を変えて書かれる(彫られる)のが一般的です。
・駒の動き方
歩兵
前方に1マスだけ進むことができます。
王将、玉将
周囲の8マスいずれか一つに進むことができます。 玉と王は、上位者を区別するために使い分けます。 どちらも動き方は同じです。
金将
周囲の8マスの内、斜め後ろ以外のマスに進むことができます。
銀将
周囲の8マスの内、真後ろと真横以外のマスに進むことができます。
桂馬
前方に2マス、左右どちらかに1マスのところに進むことができます。 他のマスに駒があっても関係なく進むことができます。
香車
前方に何マスでも進むことができます。 途中に他の駒があるときは、その先のマスに進むことはできません。
上図の○がついているマスが香車の動ける範囲です。 前方に他の駒がいない場合は、盤の端までならどのマスにでも動くことができます。 前方に味方の駒がいる場合は、味方の駒がいるマスには移動できないので、 動ける範囲はその手前のマスまでです。 その先のマスに進むことはできません。 前方に敵の駒がいる場合は、敵の駒を取ることができるので、動ける範囲はそのマスまでです。 その先のマスに進むことはできません。 飛車、角行の動きも方向が変わるだけで、これと同様です。
飛車
縦横に何マスでも進むことができます。 途中に他の駒があるときは、その先のマスに進むことはできません。
竜王
飛車の動きに加えて、斜め方向に1マス進むことができます。
角行
斜め方向に何マスでも進むことができます。 途中に他の駒があるときは、その先のマスに進むことはできません。
竜馬
角行の動きに加えて、縦横に1マス進むことができます。
成銀、成桂、成香、と金
金の動きと同じです。
盤上の駒は、その種類に応じて動くことのできる範囲(駒の動き方)が決まっています。 基本的には、その範囲内であればどのマスにでも移動することができます。 ただし、味方の駒があるマスに移動することはできません。 また、盤の外に出ることはできません。 敵の駒があるマスに移動するとき、その駒を「取る」ことができます。 移動先あるいは移動元のどちらかに敵陣が含まれる場合、「成る」ことができます。
敵の駒がいるマスに移動するとき、その駒を取ることができます。 取った駒は自分の駒台に置かれ、それ以降の手番のときに持ち駒として使用する(打つ)ことができます。 取った駒が成り駒の場合、不成の状態に戻して持ち駒に加えます。
移動先あるいは移動元のどちらかに敵陣が含まれる場合、成ることができます。 (成るか成らないか選ぶことができます。) 成ることで移動できる範囲が変わります。 成った駒を元の不成の状態に戻すことはできません。
自分の手番のとき、駒台の駒を盤上のマスに打つことができます。 既に他の駒があるマスには、持ち駒を打つことはできません。 敵陣に駒を打つときでも、不成の状態で打たなければなりません。 (それ以降の手番でその駒を動かすときに成ることができます。)
「王手がかかっている」とは、次に相手の玉を取ることができる状態のことです。 下図で、もし先手番ならば歩で玉を取ることができます。 つまり、後手玉に「王手がかかっている」局面です。 将棋では、通常、玉を取られる局面になってしまった時点で負けになります。(王手放置) よって、下図が先手番ならば後手の反則負けになります。 王手放置は反則なので、王手をかけられている方は王手を解除しなければなりません。
王手がかかっていて、どうやっても次に自分の玉を取られてしまう状態を「詰み」といいます。 (つまり、反則しないと王手を解除できない状態です。) 指した後に自分の玉に王手がかかっている指し手は、王手放置という反則です。 つまり、王手がかかっている局面では王手を解除する必要があります。 (それができない状態が「詰み」です。) 具体的な例を挙げて説明します。 図の局面では、3二の金によって後手玉に王手がかけられています。 王手を解除するためには、 1.王手している駒を取る 2.玉を逃がす のどちらかの方法をとるしかありません。 まず、1.王手している3二の金を取ることを考えます。 3二の金を取ることができる後手の駒は3一の玉しかありません。 しかし、△3二玉として金を取っても、3三の歩によって玉を取られてしまいます。 つまり、王手を解除できていないので、△3二玉は反則です。 では、2.玉を逃がすのはどうでしょうか。 後手玉が動けるマスは、さきほど考えた3二を除くと、 4一、4二、2一、2二です。 しかし、その全てのマスには金の利きがあり、玉が取られてしまいます。 よって、玉を逃げることもできません。 つまり、後手は反則せずに王手を解除することはできません。 この局面で後手の玉は「詰んでいる」ということになります。
ある手を指した後に自分の玉に王手がかかっている場合、その指し手は反則です。 つまり、王手がかかっている局面では王手を解除する必要があります。 また、敵の駒の利きを遮っている味方の駒を動かして、自分の玉に王手がかかってしまう場合もあります。 下図で4五の歩を動かしてしまうと、1二の角の利きが通って王手になってしまいます。 よって、下図で▲4四歩という指し手は反則です。
・二歩
一つの筋に自分の歩が二つ以上存在すると二歩になります。 つまり、既に自分の歩がある筋に歩を打ってしまうと、二歩という反則になります。 (歩は前方にしか進めないので、二歩になるのは歩を打つときだけです。) 二歩の対象は「歩」のみで、「と金」は除外して考えます。 下図でいうと、4筋は二歩ですが、2筋は「と金」と「歩」なので二歩ではありません。
・利きのない駒をつくる指し手
動かした駒が、盤上に利きがない駒になってしまう指し手は反則になります。 下図の「歩」、「香」、「桂」は盤上に利きがない駒です。 「歩」と「香」は敵陣一段目、「桂」は二段目までに移動するときは、成らないと反則になります。 また、それらの段にそれぞれの駒を打ってしまっても反則になります。 「駒の利き」とは、その駒が動くことができるマスと、動きを遮っている駒があるマスを合わせたものをいいます。 下図の3一の金は動けませんが、味方の駒が動きを遮っている4一、2一、3二には利きがあります。 よって、この局面は反則にはなりません。
・打ち歩詰め
「歩」を打って王手をかけて敵玉を詰ませてしまうと、打ち歩詰めという反則になります。 下図は▲1三歩打とすると敵玉は詰んでいるので、打ち歩詰めで反則です。 打ち歩詰めは、名前の通り「歩」を「打った」ときの反則です。 よって、下図から▲1三歩として敵玉を詰ませても、打ち歩詰めにはなりません。
・連続王手の千日手
連続王手の千日手という反則があるのですが、これは千日手のところで説明します。
同一局面が4回現れた時点で、「千日手」で引き分けになります。 ここでいう「同一局面」とは、盤上の駒の配置、先後の持ち駒、手番がすべて同じ局面のことです。 例えば下図の左上の局面を起点として、矢印に沿って3つの局面を経て同じ局面に戻ってきたとします。 これで同一局面が2回現れたことになります。 同様の手順を繰り返して、同一局面が4回現れた時点で「千日手」で引き分けになります。 (途中の手順が変化した場合でも、同一局面として数えます。)
同一局面が4回出現した一連の手順中、片方の手がすべて王手だった場合、 王手を続けた側が「連続王手の千日手」で反則負けになります。 下図の一連の手順中、先手の竜による王手が続いているので、 この手順を4回繰り返すと「連続王手の千日手」で先手の反則負けになります。
お互いの玉が敵陣に入る(入玉する)と、玉を攻めるのが難しくなり決着がつかなくなることがあります。 本将棋では、対局者両名の合意によって「持将棋」が成立すると引き分けになります。 あるいは、一方が「入玉宣言法」に基づいて宣言を行うことで、 宣言側の勝ち、引き分け、宣言側の負けのいずれかに決定します。 56将棋では持将棋と入玉宣言法ではなく、「トライルール」を採用しているため、 ここでの説明は省略させていただきます。 詳しくは日本将棋連盟HPの対局規定(抄録)をご覧ください。
お互いの玉が敵陣に入る(入玉する)と、玉を攻めるのが難しくなり決着がつかなくなることがあります。 それを解決するためのルールがトライルールです。 56将棋ではトライルールを採用しています。 本将棋ではトライルールではなく「持将棋」で勝敗(あるいは引き分け)を決めます。 56将棋では、先手玉が3一(後手玉は3六)のマスに進むとトライとなり、トライした方の勝ちになります。 ただし、トライするマスに相手の駒の利きがあり、玉が取られてしまう場合はトライできません。